書庫

えいせいフレンズ

「はやぶさ」との出会い

二話

「それでね! その時、空からはやぶさがとんできてね!」

「そうそう、ママびっくりしちゃった!」

 ばんごはんを食べながらぼくとママは、パパに一生けんめいはやぶさの話をしていた。そんなぼくたちを、はやぶさはイスにすわってニコニコしながら見ていた。

 ぼくたちの話を聞きながら、パパはまじまじとはやぶさを見つめていた。

「いやぁ……帰ってきたら家にフレンズがいたのもびっくりしたけど、それがまさか『衛星えいせいフレンズ』だったとはね」

「えいせいフレンズ?」

 パパの言葉にぼくとママは顔を見合わせたけど、はやぶさはパッと顔を明るくした。

『よくご存知ぞんじですね、ショウイチさん』

 ショウイチはパパの名前だ。パパは少しわらって、はやぶさに話しかけた。

「これでも、フレンズにかかわる仕事をしているエンジニアなんだ。だから、フレンズの新しい企画きかくの話は耳に入ってくるよ。それに、わたしおさなころから宇宙分野うちゅうぶんや大好だいすきでね。国際宇宙連合こくさいうちゅうれんごうのメンバーになりたくて月を目指したこともあったよ」

「あら、その話ははじめて聞いたわ。パパは月に行きたかったの?」

「学生のころだから、マキコと出会う前の話さ。だから、国際宇宙連合こくさいうちゅうれんごうのこの企画きかくは気になってはいたよ」

 パパの話は少しむずかしいけど、国際宇宙連合こくさいうちゅうれんごうはぼくも知ってる。日本のJAXAやアメリカのNASA、民間みんかん宇宙開発うちゅうかいはつをしている会社なんかもいっしょになって、宇宙うちゅうのことを調べたりしているところだ。月に基地きちを作っていて、そこで活動している。ぼくは宇宙うちゅうのことがすきだから、学校の他の子よりも少しぐらいは宇宙うちゅうにくわしいんだ!(ちなみに、マキコはママの名前)

『おさっしの通り、ボクは衛星えいせいフレンズです! 国際宇宙連合こくさいうちゅうれんごうの日本の部門でつくられました』

たしか、日本の子どもたちの情操教育じょうそうきょういくと、宇宙うちゅう興味きょうみを持ってもらうため、だったね。これまで打ち上げられて活躍かつやくしていた人工衛星じんこうえいせい探査機たんさきなどの宇宙機うちゅうきの、知識ちしきやAIをフレンズに移植いしょくして、子どもたちとれ合ってもらう。そういう企画きかくだったはずだよ」

『すばらしい! ユキくんのお父様は色んな事をご存知ぞんじですね!』

「でしょ! ぼくのじまんのパパなんだ!」

 ぼくやはやぶさにほめられて、パパはなんだかてれくさそうにしていた。でも、ぼくは本当にそう思っている。パパは宇宙うちゅうのことにすごくくわしくて、ぼくにたくさんのことを教えてくれる。はやぶさのことを教えてくれたのはママだけど、ママにはやぶさのことを教えたのはパパだって言っていた。パパは世界で一番すごいと思ってるし、一番かっこいいし、一番だいすき!

「ただ……」

 そのパパの声がなんだかちょっと、へんな感じがしてぼくはパパのほうを見た。おこってるのともちがうし、悲しいのともちがう。パパはちょっと、見たことないようなふしぎな顔をしていた。

「……うん。それはまあ、いいや。なんでもないよ」

 そういって、パパはニコッとわらった。そしてぼくにするみたいに、はやぶさの頭をぽんぽんとなでた。

「ところで、はやぶさくんは帽子ぼうしがないのかい?」

 パパに言われて、はやぶさは頭の上のぼうしをちょっとさわった。そういえば、パパは家に帰ってくるとぼうしをぬぐけど、はやぶさはずっとそのままだった。

『えっと……この帽子ぼうし背中せなかのソーラーパネルと同じで、ボクの一部なので、外れないんですよ』

 なんだか、はやぶさもさっきのパパみたいな、ふしぎな顔をしてる気がする。わらっているけど、ちょっとへんな感じがする。

「そうなの? る時大変たいへんじゃないかしら?」

『ご心配ありがとうございます。でも、ボクたちフレンズは夜はすわったまま充電じゅうでんさせていただくので、必要ひつようはないんです』

「あら、そうなの」

『はい』

「それなら、わたしの仕事場にフレンズ用のチェージチェアがあまっていたはずだから、上司じょうしに話してりてきてあげよう。『衛星えいせいフレンズ』がに来たと言えば、よろこんでしてくれるさ」

『本当ですか! ありがとうございます! チャージチェアって充電じゅうでんしやすいって聞いたことがあるので、気になっていたんですよね!』

 パパの顔はもうすっかり、いつものパパだった。はやぶさももう、へんな顔はしていない。さっきのふしぎな感じはなんだったんだろう? と少しだけ思ったけれど、ぼくは今日からのはやぶさとの生活にワクワクしていて、そのことはもうすっかりわすれていたんだ。

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