「そこで、何をしているの」
「ホシが落ちてくるのを待っているのさ」
「ホシ?」
「満月を過ぎた、ちょうど今みたいな十六夜の月の頃にはね。この軌道エレヴェエタにホシが当たって落ちてくることがあるんだ。……ああ、ほら。見てご覧」
そう言ってその人が指差した方向に目を向けると、天まで伸びている機械の樹木みたいな軌道エレヴェエタ沿いに、チカチカと光りながらころん、ころんと、何かが落ちてくるのが見えた。その人はいそいそと手にしていた耐熱シィトを広げると、軌道エレヴェエタに押し当ててその何かを掬い取ろうとしている。やがて、その何かはぽすん、と、彼女の耐熱シィトの中に収まった。
「よしよし、うまく回収できた。取り零すと砕けてしまうことがあるからね」
満足げな表情を見せるその人はしかし、耐熱シィトの中からまだ淡く光るそれを摘み取ると、酷く怪訝そうな顔をしていた。
「どうしたの」
しかし、彼女は僕の問いには答えず、繁々とそれを見つめている。だいぶ発光が収まってきたそれは、まるで軌道エレヴェエタの足元に溜まる錆の水溜りのように、紅く紅く澄んだ色の塊であった。
「ははぁ……これはなんということだ。暫くこの仕事を続けているが、こんな色のホシに出くわしたのは初めての事だ」
その人は酷く満足そうに、鞄の中から巾着袋を取り出して大事そうにその「ホシ」を仕舞い込んだ。僕は興味本意からその鞄の中を覗き込む。すると、色んな金具や繊細な工具がびっしりと中に入っていた。
「こら、何も面白いものなんかないよ。ただの商売道具だ」
「あなたは……?」
僕の問い掛けに、彼女はニヤリと笑って答えた。
「