「それで、その時みちびきが来てね! ぼくを見つけてくれたんだよ!」
ぼくは今日の話をパパとママにしていた。ぼくはすごくこうふんしていたんだけど、ぼくの話を聞いたパパは頭をかかえていたし、ママはこまったようにため息をついていた。
「……まぁ、なんだ。うん。ユキにGPS端末を持たせておいてくれて助かったよ、マキコ」
「一緒に遊んでくれていたのがみちびきさんで良かったわ……私もずっとユキの位置情報を見てるわけじゃないから、みちびきさんがいなかったらもう少し見つけるのが遅くなっていたかも」
「えっ」
パパとママの話を聞いて、ぼくはふあんになった。みんなが来るまでの間はあんなに心細くて不安だったのに、あれがもっとつづいていたかもしれなかったなんて。
「ユキ、今日はみちびきさんがいたからなんとかなったけど、外でかくれんぼをする時は気をつけような? みんなとかくれんぼをする場所をちゃんと決めて、そこから出ないようにするといいと思うよ」
「はい……」
ぼくはしゅんとしてしまったし、見つけてもらえなかった時のふあんな気持ちも思い出してしまって心がきゅっとした。そして、またなみだが出てきてしまった。それを見たはやぶさが、もうしわけなさそうにパパに言った。
『あの、ごめんなさい……ボクがついていたのに、こんな事になってしまって』
「いや、はやぶさくんは悪くないよ。むしろいつもユキと遊んでくれてありがたいと思っている。ユキはひとりっ子だからね。まるで兄弟ができたみたいでうれしいと思っているんだよ」
『でも、ボク……』
そう言ってうつむいてしまったはやぶさを、ママがこまったようにわらってあたまをなでていた。
「はやぶさくんは、ユキのことを弟のように思ってくれているのね。うれしいわ。そういえば、はやぶさくんにも【あかつき】や【イカロス】、そして【はやぶさ2】っていう弟たちがいるんだったわね。しっかりしているのは、そのせいかしら?」
『……!』
ママの言葉に、はやぶさは目を見開いて言葉をつまらせた。ぼくが見てもわかるぐらい、はやぶさの様子はへんだった。
『ボク……ボク、は……』
はやぶさはそう言って、またうつむいた。両手でぼうしをギュッとつかんでいる。はやぶさのそばにいたママは、そんなはやぶさのようすにちょっとびっくりしていた。
「はやぶさくん。やっぱり、君は……」
パパが何か言おうとしていたけど、そのままギュッと口をとじた。気のせいじゃない。またあの、まゆをひそめるようなへんな顔をしている。なにかを言うのをがまんしているように見える。なんだか……ちょっとこわい。
「……いや、私の気のせいだろう。なぁ、はやぶさくん」
そう言って、パパははやぶさの頭をぽんぽんとなでた。はやぶさはぼうしをつかむ手をゆるめて、パパの顔を見上げていた。
「ユキ、そろそろお風呂に入ろう。はやぶさくんもそろそろ休んだほうがいい。向こうの部屋にチャージチェアを置いてあるよ。昼間に工場長が自分の車に積んでわざわざ持ってきてくれたんだ」
『はい……ありがとうございます』
はやぶさはそう言ってわらっていたけど、なんだかつらそうだった。
ぼくははやぶさに声をかけようとして、あることに気がついた。はやぶさがかぶっているぼうしが、くしゃくしゃになっている。そしてなんだか、ぼうしの中に何かがあるように見えた。まるで、ぼうしで何かをかくしているような。
……あれ? はやぶさのぼうしは、体の一部なんじゃなかった……っけ?
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