書庫

えいせいフレンズ

海と「だいち」と「ひまわり」

二話

『ソウマさま、すばらしかったですわ!』

 見事にスイカをわることができたソウマくんは、みちびきにほめられてテレていたけど、なんだかうれしそうにも見えた。
 ぼくたちはデイサービスのスタッフさんたちが切り分けてくれたスイカを食べながら、パパやママ、カズトくんたちと話をしていた。はやぶさやだいちはスイカを食べられないけれど、ぼくたちが食べているところをニコニコしながら見ていた。

「あまくて美味しいスイカね! スイカりなんて初めてかもしれないわ」
「私たちが子どものころは、このあたりの海はまだ入れなかったからね。スイカりなんてできるような雰囲気ふんいきじゃなかったからなぁ」
「入れなかった?」

 ぼくは口の中からスイカのタネを取り出しながら、パパとママの話を聞いていた。

「ユキは、東日本大震災ひがしにほんだいしんさいの話は覚えているかい?」
「うん。昔あったっていう、大きなじしんのことでしょ?」
「そう。パパが生まれる前のことなんだけどね。東北地方を中心にしたすごく大きな地震じしんがあったんだ。それでこのあたりは大きな津波つなみにおそわれて、家も建物たてものも何もかもこわされてしまった。だから、パパが子どもの頃はこの海岸もまだ元通りになっていなくてね。あまり海で遊んだことはなかったんだよ」
「そうだったんだ……」

 この海岸の手前には、しんさいで亡くなった人をとむらう観音かんのんさまの慰霊碑いれいひがあって、ぼくたちも遊ぶ前に手を合わせてきた。ここに来る通り道には、大きな波におそわれてボロボロになった小学校もある。おじいちゃんは子どものころ、この小学校に通っていたのだと聞いた。おじいちゃんの住んでいた家もつなみで流されてしまったらしい。
 家が流されちゃって、学校までこわれるなんて、どんなにすごい波だったんだろう? ぼくはそうぞうして、ちょっとこわくなった。

「でも今はすっかりこの辺りもきれいになって、津波つなみがあったってわかるのはあの小学校ぐらいだけどね」

 ぼくのこわい気持ちをさっしてくれたのか、ママがそう言ってぼくのせなかをなでてくれた。けど、なぜかだいちは、すこしこわいかおでまわりを見回していた。

『そうとも言い切れませぬ。震災しんさい前の兄のデータがあるのですが、このあたりの景色けしきは昔とくらべて大きくわっておるのです。たとえばほら、あそこの……』

 そう言ってだいちが指さした方向に、思わずぼくは目を向けた。そのずっと先には海岸線が見えるだけだったけど、それよりもぼくの目に入ったのは、もっと手前にいる一人のフレンズのすがただった。
 かたぐらいまでの長さの黄色いかみには、ひまわりの花のかみかざりをつけている。かみと同じ色のドレスのような服を着た女の子のようなフレンズは、少しこわい顔でじっと海のほうを見つめていた。

『あれは……【ひまわり】? 気象観測衛星きしょうかんそくえいせいの……』

 はやぶさはそうつぶやいて、そのひまわりのほうに歩き出そうとしていた。それに気づいたらしいひまわりは、大声で何かをさけんでいるように見えたけど、遠いし波の音や他の人のざわめきで聞き取れない。

 するととつぜん、はやぶさが頭をかかえて、目を見開いていた。だいちも、みちびきも、同じような顔をしている。ぼくがオロオロしていると、えいせいフレンズたちはおたがいに顔を見合わせていた。

『今のデータは、ひまわりから受信じゅしんしたものですわね?』
『ああ、間違まちがいないと思う』
『二人はみなに声をかけて回ってくれ。拙者せっしゃはこの周辺しゅうへんにいるフレンズたちに優先度ゆうせんどSで情報じょうほう伝達でんたついたす!』
『『了解りょうかい!!』』

 そう言ってみちびきとだいちはバラバラに走り出した。はやぶさはぼくの手をつかむと、まわりに聞こえるような大きな声でさけんだ。

『みんなー、すぐに海から出て!! 海岸からはなれたほうがいい!! ひまわりが、もうすぐすごい雨と風が来るって言ってる!!』
「なんだって!?」

 あわてたパパとママが立ち上がる。はやぶさはぼくの手をパパとママの方にさしだした。

『お二人はユキくんをつれて車にもどって下さい! ボクは海岸にいる人たちに声をかけてまわります!』

 そう言うと、はやぶさはあっという間に海岸の方へ走り出してしまった。

「はやぶさ!!」

 ぼくの声ははやぶさにとどいたんだろうか。はやぶさがいっしゅんだけ、ぼくに手をふったように見えた……気がする。

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